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ファッション・美容分野の翻訳は、見た目ほど簡単ではない

化粧品やファッション、スタイルに関する文章の翻訳を、極めて難しいものだと思う人はあまりいないでしょう。技術文書や医療文書のように、独立した翻訳分野として扱われることもありません。とても簡単だと思われがちです。ところが実際には、まるでテーマについて何も知らず、内容や使い方もまったく分からない人が訳したかのような本や記事を読まされることが少なくありません。こうした文章を訳す際の主な難しさについて見ていきましょう。

分野ごとに独自の「用語」がある

美容やファッション、スタイルに関する現代的な概念の多くは、辞書を引いても見つかりません。見つかったとしても、別の意味で載っていることがあります。必要な言葉は何千人もの人に使われていても、辞書には反映されていないことがあるのです。こうした事情は、分野に詳しくない翻訳者の悩みの種になります。

sponge は多くの場合「スポンジ」と訳せますが、美容分野では「スポンジ」をもとにした「スポンジパフ」という呼び方が定着しています。この分野では、外来語が多く使われているのが実情です。ティント、シマー、ハイライター、コンシーラー、カヤル……。その多くは英語由来の言葉です。

外来語が必要以上に使われることもあります。近年、「プライマー」という言葉をよく見かけるようになりましたが、この製品はすでに「化粧下地」という名前で知られています。ただ、新しい製品の種類や技法、デザインを表すために新しい言葉が生まれることも少なくありません。カヤルは単なるアイライナーではなく、目の粘膜にも使える柔らかいペンシルです。コンシーラーも「コレクター」と完全に同じ意味ではありません。コンシーラーは目の下に使うための製品だからです。

「用語」は変化することがあります。ロシア語圏に、卵のような形をした(それ以外の形のものもあります)ふっくらしたメイク用スポンジが登場した当初は、ほかのスポンジと同じように、単に「メイク用スポンジ」などと呼ばれていました。ところが近年では、こうした形のスポンジは「ビューティーブレンダー」という名前で定着しています。この名称は、オリジナルブランドのBeautyblenderだけでなく、他社の類似品にも使われます。

こうした外来語はまだ辞書に定着していないため、表記に統一されたルールがありません。「カヤル」「カヤール」「カヤル」のように表記が分かれたり、「ビューティーブレンダー」の間にスペースやハイフンを入れたりする例もあります。翻訳者は、既存の音訳・翻字の慣例に関する知識を活用するか、検索エンジンで最もよく使われている表記を調べて(完全一致で、引用符を付けて検索するなど)、それを採用するとよいでしょう。

最も適切な翻訳とは、概念の違いをきちんと踏まえたものです。Body butter を単に「ボディオイル」と訳すのは適切ではありません。この表現は液状のオイル(oil)に使われるため、多くの読者は液体の製品を思い浮かべてしまいます。Body butter は、オイルをベースにした、こっくりとした質感のボディクリームです。こちらでは「固形オイル」「濃厚オイル」「クリームオイル」といった名前で販売されることもありますが、「ボディバター」や「クリームバター」(「オイルバター」と呼ばれることはあまりありません)という名称のほうが一般的です。店頭に「バター」と書かれた製品が並んでいるのに、読者を混乱させるだけの長い説明をわざわざ加える必要があるでしょうか。この場合は「バター(固形オイル)」と訳せます。

ロシア語の言い換えよりも広く使われている場合であっても、新しい英語由来の言葉を好まない翻訳者もいます。こうした判断には、個人の美的な好みが関わります。翻訳する文章が誰に向けられているのかを忘れてはいけません。ファッションや美容に関する記事や本を読むのは、たいていその分野に関心があり、用語にもなじみのある人たちです。また、商品を実際に使っている人や、これから使おうと考えている人に向けた文章でもあります。つまり、商品が店頭でどのような名前で売られているかを知っている人、あるいはこれからその名前で検索する人たちです。だからこそ、より一般的に使われている訳語を選ぶのが理にかなっています。

自分の知識を確かめる

女性翻訳者は、自分はこの分野に詳しいから、知らないことは大半の女性も知らないはずだ(逆に、大半の女性が知っていることなら自分も知っているはずだ)と、思い込んでしまうことがあります。しかし、自分の感覚に頼るのではなく、きちんと確かめることが大切です。

たとえば原文に espadrilles という言葉が出てきたとします。翻訳者は「こちらにはそんな言葉はない」と思い、説明を加えなければと考えるかもしれません。しかし「エスパドリーユ」と検索すれば、この言葉を使ったロシア語の記事がすでに数多くあることや、ネットショップでこの靴がその名前で販売されていること、そして人々が「エスパドリーユ」という言葉でこの靴を探していることが分かります。

ある言葉や表現が実際に使われているか確かめたいときは、GoogleやYandexで検索します。辞書に載っていない言葉をどう訳すのがよいか調べたいときは、ファッションや美容を扱う大規模な専門コミュニティで質問してみましょう。

翻訳の50の色合い

色の名前の翻訳についても、特に触れておきたいと思います。メイクや服では、色のわずかな違いがとても重要です。パーソナルカラーに関する文章なら、なおさらです。ミルク色とバニラ色、卵の殻の色がそれぞれ異なる世界なのです。だから翻訳でも、その違いを表現しなければなりません。誰にでもなじみのある大まかな色名で「だいたいこんな色」と済ませてはいけないのです。

たとえば原文に teal が出てきて、翻訳者があまり深く考えずに「ターコイズ」と訳したとします。その後に turquoise が出てきても、同じく「ターコイズ」と訳してしまう。まるで著者がうっかり別々の色名を使ったかのようです。turquoise は簡単で、辞書にも「ターコイズ」と載っています(宝石のトルコ石を意味する言葉でもあります)。一方、teal は辞書に載っていることがずっと少ない言葉です。オックスフォード辞典では「dark greenish-blue colour(暗い緑みがかった青色)」と説明されています。同じオックスフォード辞典で turquoise が「greenish-blue colour(緑みがかった青色)」とされていることを踏まえると、teal は「濃いターコイズ」と訳してもよいでしょう。あるいは字義どおり「暗い緑みがかった青」と訳すこともできます。

つまり、色の名前を訳すときは、国内外の辞書や百科事典など、信頼できる資料を活用する必要があります。

「カーマイン」「トマト色」「ラクダの毛の色(キャメル)」といった言葉を恐れて、自分なりの説明に置き換える必要はありません。色彩学では、これらは定着した名称です。

また、適切な訳語を探さずに、自分が色から受けた印象を説明するのは、できる限り避けましょう。たとえば『色とスタイル』という翻訳書(ちなみに、パーソナルカラーの分野で高い評価を得ているヴェロニク・ヘンダーソンとパット・ヘンショーの著作です)には、次のような意外な訳が見られます。

  • rose beige(ローズベージュ) — 「ベージュ」
  • rose brown(ローズブラウン) — 「ライトチョコレート」
  • mint(ミント) — 「グレイッシュブルー」(ほかにも誤訳があります!)。

翻訳者自身の想像で説明する以外に、こうした訳を説明することはできません。

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